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ヒサナガドットビズのフランス通信

アンティークドアーの発掘 その3

brocante 建物使い道のないような屑材木をこなごなにして糊で固めた上にお化粧の薄板を張ったような玄関扉を使っている人をみると「へえーあなたってそういう人なんですね」と言いたくなる。
なにも建具を扱った商売をしているからではなく、365日開け閉めして毎日出入りする自分の家の扉に無神経になれないだけだ。
昨今は機能と見た目の良い建具が主流だそうでフランスでも防犯第一の機能扉も出回っていて、それはそれで一目置こうと思う。
しかし、"ギィーッ・バタン"と言うほどの重さでは無いにしろ外から守ってくれているような厚手の木扉はフランス人なら当たり前に認めているし、言わば尊敬し、また憧れてもいる。
その証拠がこの扉屋の親父の偉そうな顔に張り付いている「傲慢」だ。

「オレは35年前からこの商売をやっていて、田舎のムニジィエー(建具屋)からここまでになった。1980年ごろから財布の底がフラフラしなくなったな(高度成長期のこと)。こんな田舎の衆でも新しい物を買い換える時がある。その時裾が腐った扉なんかをぶん投げていたのをオレは直せば使える物として蓄えたのさ。そのうち皆が持ってきてくれるようになったんだ」
薄暗いだけでかび臭くはない倉庫の中を歩きつつ数千本の建具に色目をつかいながら異邦人のワタシは黙って聞くだけだった。

「300年前の樫の木戸には同じ時代の樫の廃材を補修材にする。マホガニーの扉には同じマホガニーの価値の低いものを壊してそこにあてがう。だからこの中にあるものは全て役に立つパーツだ、埋木、接ぎ、何にでも使うのさ」
こんな田舎に・・・とは言わないが「どんな人が買いに来ますか」と尋ねたら「パリ、オランダ、アメリカ、ドイツ」と各国の名を上げ連ねた。田舎の人にとってPARISはやはり外国なんだ。
「日本人は?」とワタシにとって大事な質問をした。
「ジャポネは来たことがない、ベトコンはある」
「なぜ、ベトナムから?」
[コピー作るためさ、追い返してやったけどな]

広場の教会の鐘がクァーンーコーンと鳴った。もう昼時だった。
こんな豪腕の爺いとは午後の対戦に持ち込もうと相棒と相談し、ワタシたちは近くのビストロに顔を突っ込んでパスティスをやりはじめた。
              続く (2007/05/17)

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